転がる種

映画、本、音楽、食、美術…。日常で出会う種々。

ホワイトアスパラガス、届く

 どっさり届いたのは、ホワイトアスパラ。

 ほかに、グリーンアスパラが二種類、長さも太さも同じプロのお百姓さんがつくったものと、母の畑でひょろひょろと生えている細くて曲がったものと。それに山で採ったウドも。

 

 開いた段ボールから、遠くなった初夏の早朝が立ち昇ります。

 早朝にアスパラを採って、採れたてを井戸水で洗って、大鍋で茹でて、みんなで食べる。母方の祖母の家には、大きなアスパラ畑がありました。

 

 アスパラは、土から出るまではホワイト、土から出てお日様を浴びるとグリーンになります。ホワイトアスパラを採るのは、まだ畑が白い霧に覆われている頃。寝ぼけ眼で畑に出ると、辺りは松などの森の香りとひんやりとした静けさに満ち、背筋が伸びます。深呼吸すると、清涼な空気がからだのなかに広がりました。

 土の中のホワイトアスパラが生えているのをみつけるには、ほんのわずかな土の隆起を探します。それは小川のへりの草むらでアマガエルをみつけるのに似ていました。ホワイトアスパラも、アマガエルも。それぞれが持つわずかなリズムをつかまえます。

 私はホワイトアスパラのありかをいち早くみつけて、妹と競争するのが好きでした。小さな弟は、長靴に土が入らないように歩くので精一杯です。

 

 土のなかのアスパラを切り、十分集めたら、湧き水を流しっぱなしにしている小屋のシンクでアスパラを洗います。

 アスパラは、大きな鍋で茹でられ、大皿に盛られます。

 おばあちゃんと、叔父さんと、お父さんと、お母さんと、妹と、弟と。マヨネーズをつけながら、みんなで食べるホワイトアスパラはそれはそれは美味しいものでした。

 ホワイトアスパラでお腹がすっかりいっぱいになり、外に出ると、お日様が畑にかかっていた白い霧を拭い、昼の準備を始めています。

 

 段ボールからホワイトアスパラを取り出すと、初夏の霧が広がるようでした。思えばあの霧もホワイトアスパラの美味しさの一つだったのです。とにかく早く、早くと急かすようにいただくホワイトアスパラ。採れたてが最高なのに、目の前にあるホワイトアスパラは、北海道から冷蔵便、発送日から中一日置いての到着。これは急がないと。

 ホワイトアスパラの状態を見て、まあ大丈夫そうだと判断するやいなや、沙羅に電話をしました。

「もしもし。あのね、実家からホワイトアスパラが届いたの。今から持って行くから」。電話を切るとすぐに着替えて外出しました。